労災事故被害者のための弁護士による労働災害SOS

労働災害(労災)で、指や手足を切断してしまった場合の慰謝料額は?<弁護士解説>

労働災害(労災)で指や手足を切断してしまった場合に、会社に対して慰謝料などを請求できるかについて解説したいと思います。

仕事の種類や内容によっては、身体に怪我を負ってしまう場合があります。

業務に起因して怪我をしてしまった場合には、いわゆる「労働災害(労災)」になります。

特に工場での作業で大きな機械等を使用する場合には、作業手順や作業員相互の声かけ等が間違えた時などに機械に引き込まれ、指や手足を切断してしまう危険性があります。

当事務所にも、何度か指などの切断事例の相談や依頼がありました。

会社としては、このような場合には、作業員の身体に危険がおよぶ可能性があるわけですから、安全教育を実施するとともに、機械にも安全装置を設置しておくなど、安全に配慮する義務があります。

そして、業務に起因して指や手足を切断ということになれば、労災認定がされます。

その結果、労災保険から保険給付を受けることになりますが、指や手足の切断によって将来の仕事にも影響がでますし、受けた精神的損害から考えても労災保険給付だけではとてもまかなえない損害が発生しています。

そこで、労働者が労働災害で仕事中に指や手足を切断し、そのような後遺障害が残ってしまった場合に、会社に対して慰謝料などの損害賠償できるかについて解説をしたいと思います。

会社には、「安全配慮義務」があります。

これは、判例によると「労働者が労務提供のため設置する場所、設備もしくは器具等を使用し又は使用者の指示のもとに労務を提供する過程において、労働者の生命及び身体等を危険から保護するように配慮すべき義務」とされています(川義事件最高裁判決)。

労働安全衛生法24条でも、「事業者は、労働者の作業行動から生ずる労働災害を防止するため必要な措置を講じなければならない」と規定しています。

会社が安全配慮義務を怠り、それを原因として労働者が労働災害(労災)により指や手足を切断をしてしまった場合には、会社には安全配慮義務違反として、労働者が被った損害を賠償する責任が発生します。

では、この安全配慮義務違反で労働者が指や手足を切断した場合、どうなるでしょうか。

まず、指や手足を切断で認定される労働災害(労災)の後遺障害等級は、以下のようになります。

【上肢の切断】
1級6号両上肢をひじ関節以上で失ったもの
2級3号両上肢を腕関節以上で失ったもの
4級4号1上肢を肘関節以上で失ったもの
5級2号1上肢を腕関節以上で失ったもの
3級5号10指を失ったもの
6級7号1手の5指又は拇指を併せ4指を失ったもの
7級6号1手の拇指を併せ3指又は拇指以外の4指を失ったもの
8級3号1手の拇指を併せ2指又は拇指以外の3指を失ったもの
9級8号1手の拇指又は拇指以外の2指を失ったもの
11級9号1手の示指、中指又は環指を失ったもの
12級8の2号1手の小指を失ったもの
13級5号1手の拇指の指骨の一部を失ったもの
14級6号1手の拇指以外の指骨の一部を失ったもの


【下肢の切断】
1級8号両下肢を膝関節以上で失ったもの
2級4号両下肢を足関節以上で失ったもの
4級5号1下肢を膝関節以上で失ったもの
5級3号1下肢を足関節以上で失ったもの
7級8号足をリスフラン関節以上で失ったもの
5級8号10趾を失ったもの
8級10号1足の五趾を失ったもの
9級10号1足の第1趾を併せ2趾以上を失ったもの
10級8号1足の第1趾又は他の4趾を失ったもの
12級10号1足の第2趾を失ったもの、第2趾を併せ2趾を失ったもの又は
第3趾以下の3,2趾を失ったもの


労災が認定された場合には、労災保険から保険給付を受けますが、指や手足を切断した場合には、この保険給付では損害のすべてを補填するのは難しいでしょう。

そこで、不足する損害については、安全配慮義務を怠った会社に対して損害賠償請求をしていくことになります。

過去の労働災害(労災)の事例で、指や腕などの切断の場合、どのような損害賠償がなされたか、ご紹介します。

労働災害(労災)による指の切断事例

【東京地裁平成27年4月27日判決】

工場内のプレス機械で作業中の工場長であった労働者が左手をプレス部分に差し込んで左4指切断の負傷をした労災事故。

工場長は、労災の後遺障害等級8級が認定されました。

そこで工場長は、会社に対し5521万1258円の損害賠償を求めて提訴しました。

判決は、会社がプレス機に安全カバー及び自動停止装置を取り付けなかったことは、安全配慮義務違反であるとして、会社の損害賠償責任を認めました。

しかし工場長は、10年近くにわたって被告の工場長であり、他の従業員の安全も管理すべき立場にあったところ、別の事故があったにもかかわらず、積極的に本件プレス機に安全カバーや自動停止装置を取り付けるように取り組まなかった過失があるとして、工場等の過失割合を4割としました。

その結果、裁判所は会社に対し、1651万7514円の損害賠償を命じました。

労働災害(労災)による腕の切断事例

【大阪地裁平成13年2月28日判決】

知的障害者が勤務先の工場においてクリーニング作業中、機械に右腕を挟まれ右上肢完全切断等の傷害を負った労災事故。

労働者は、勤務先の会社、代表取締役、本件機械の保守・修理・点検を共同で行っていた別の2会社に対し、1億円の損害賠償を求めて提訴しました。

判決は、勤務先会社は安全装置が作動しない状態であることを認識しつつ、労働者をプレス加工作業に従事させ、本件事故に至ったことに加え、労働者は安全装置が故障しており、短絡されている状態であることを知らされていなかったもので、勤務先会社が安全配慮義務に違反していたと判断し、代表取締役にも監督義務違反を認めました。

また、機械の保守・修理等を共同で行っていた2社については、最低限度の要請として、本件機械を作業者の生命・身体の安全を確保できるような状態に維持しておくべき共同の注意義務を有していたこと、また、その下請も含めた従業員らに対しても、本件機械の人体への危険性を周知させ、安全確保への徹底した指導・監督を行うべき共同の注意義務があったのに、これを怠った、として、損害賠償責任を認めました。

その結果、裁判所は被告らに対し、連帯して、4376万3640円の損害賠償を命じました。

このように、労働災害(労災)で指や手足を切断の後遺障害が残った場合には、労災保険給付だけでなく、会社に対して安全配慮義務違反を理由として損害賠償請求ができる場合があります。

ただし、使用者側から過失相殺の主張が出てくることがほとんどであり、その争いで、慰謝料額などの賠償額が大きく変わってしまいます。

指や手足を切断という後遺障害が残った場合には、その後の仕事に大きな影響があります。
将来もらえるはずだった収入を得られなくなることが多いと思います。

損害賠償額も高額です。

したがって、適正な賠償額を得られるよう、指などの切断における後遺障害等級が正しいかどうか、正しい後遺障害を前提として、損害賠償額が適正かどうかについて、弁護士に相談することが大切です。

会社に損害賠償請求ができるのかどうか知りたい場合は、当事務所までご相談ください。

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