労災事故被害者のための弁護士による労働災害SOS

労働災害(労災事故)で、指や腕、腕や足を切断の場合の慰謝料額は?<弁護士解説>




労働災害(労災)とは?

労働災害(労災)で指や腕、あるは腕や足(脚)を切断してしまった場合に、会社に対して慰謝料などを請求できるかについて解説したいと思います。

仕事の種類や内容によっては、身体に怪我を負ってしまう場合があります。

業務に起因して怪我をしてしまった場合には、いわゆる「労働災害(労災)」になります。

特に工場での作業で大きな機械等を使用する場合には、作業手順や作業員相互の声かけ等が間違えた時などに機械に引き込まれ、指や腕、腕や足を切断してしまう危険性があります。

当事務所にも、何度か指を切断したり、腕を切断したり、足を切断したり、などの切断事例の相談や依頼がありました。

会社としては、このような場合には、作業員の身体に危険がおよぶ可能性があるわけですから、安全教育を実施するとともに、機械にも安全装置を設置しておくなど、安全に配慮する義務があります。

そして、業務に起因して指や腕や腕や足を切断ということになれば、労災認定がされます。

業務災害で労災認定がされた場合には、労働者災害補償保険法による以下のような補償を受けることができます。

【療養補償給付(療養給付)】
指切断、腕切断、足切断による診察、治療等に対する補償

【休業補償給付(休業給付)】
指、腕、足の切断の治療ために労働できない場合、休業の4日目から休業が続く間の補償が支給されます

【傷病補償年金(傷病年金)】
指、腕、足の切断の治療開始後1年6ヵ月を経過しても治らない場合に、傷病等級に応じて支給されます

【障害補償給付(障害給付)】
治療を継続した結果、症状固定(それ以上よくならない状態)後に後遺障害等級(1~14級)に基づいて支給されます

【介護補償給付(介護給付)】
切断による後遺障害等級が1級と2級で常時介護が必要になった場合の補償

これら補償が受けられるのですが、指や腕や足の切断によって将来の仕事にも影響がでますし、受けた精神的損害から考えても労災保険給付だけではとてもまかなえない損害が発生しています。

そこで、労働者が労働災害で仕事中に指や腕や足を切断し、そのような後遺障害が残ってしまった場合に、会社に対して慰謝料などの損害賠償できるかについて解説をしたいと思います。

会社には、「安全配慮義務」があります。

これは、判例によると「労働者が労務提供のため設置する場所、設備もしくは器具等を使用し又は使用者の指示のもとに労務を提供する過程において、労働者の生命及び身体等を危険から保護するように配慮すべき義務」とされています(川義事件最高裁判決)。

労働安全衛生法24条でも、「事業者は、労働者の作業行動から生ずる労働災害を防止するため必要な措置を講じなければならない」と規定しています。

会社が安全配慮義務を怠り、それを原因として労働者が労働災害(労災)により指や腕や足を切断をしてしまった場合には、会社には安全配慮義務違反として、労働者が被った損害を賠償する責任が発生します。

では、この安全配慮義務違反で労働者が指や腕や足を切断した場合、どうなるでしょうか。

まず、指や腕や足を切断で認定される労働災害(労災)の後遺障害等級は、以下のようになります。

【上肢の切断】
1級6号両上肢をひじ関節以上で失ったもの
2級3号両上肢を腕関節以上で失ったもの
4級4号1上肢を肘関節以上で失ったもの
5級2号1上肢を腕関節以上で失ったもの
3級5号10指を失ったもの
6級7号1手の5指又は拇指を併せ4指を失ったもの
7級6号1手の拇指を併せ3指又は拇指以外の4指を失ったもの
8級3号1手の拇指を併せ2指又は拇指以外の3指を失ったもの
9級8号1手の拇指又は拇指以外の2指を失ったもの
11級9号1手の示指、中指又は環指を失ったもの
12級8の2号1手の小指を失ったもの
13級5号1手の拇指の指骨の一部を失ったもの
14級6号1手の拇指以外の指骨の一部を失ったもの


【下肢の切断】
1級8号両下肢を膝関節以上で失ったもの
2級4号両下肢を足関節以上で失ったもの
4級5号1下肢を膝関節以上で失ったもの
5級3号1下肢を足関節以上で失ったもの
7級8号足をリスフラン関節以上で失ったもの
5級8号10趾を失ったもの
8級10号1足の五趾を失ったもの
9級10号1足の第1趾を併せ2趾以上を失ったもの
10級8号1足の第1趾又は他の4趾を失ったもの
12級10号1足の第2趾を失ったもの、第2趾を併せ2趾を失ったもの又は
第3趾以下の3,2趾を失ったもの


労災が認定された場合には、労災保険から保険給付を受けますが、指や腕や足を切断した場合には、この保険給付では損害のすべてを補填するのは難しいでしょう。

そこで、不足する損害については、安全配慮義務を怠った会社に対して損害賠償請求をしていくことになります。

切断事故では、どんな損害賠償を求めることができるか?

指切断、腕切断、足切断で後遺障害を負った場合には、どのような損害賠償を求めることができるでしょうか? まず、指や足などを切断したわけですから、治療をしなければなりません。

入院することもあるでしょう。

そうなると、治療費、入院雑費、通院交通費などがかかります。

その間、会社を休むことになりますので、休業損害が発生します。

退院後、日常生活をするのに、装具・器具が必要かもしれませんし、自宅や自動車を改造することも必要になってくるかもしれません。

それに、指、腕、足などを切断した場合には、後遺障害が残り、一生不自由な生活を強いられます。

精神的損害も大きいものがあります。

したがって、慰謝料を請求することになります。

慰謝料には、切断事故によって入院し、退院した後も通院を続けなければならなくなった精神的苦痛に対応する「入通院慰謝料」と、後遺障害が残ったことに対する精神的苦痛に対応する「後遺障害慰謝料」に分かれます。

ここでは、後遺障害慰謝料について説明します。

後遺障害慰謝料は、後遺障害等級によって、一応の相場が形成されています。

認定された後遺障害に応じ、次のようになっています。

後遺障害等級1級の場合2800万円
後遺障害等級2級の場合2370万円
後遺障害等級3級の場合1990万円
後遺障害等級4級の場合1670万円
後遺障害等級5級の場合1400万円
後遺障害等級6級の場合1180万円
後遺障害等級7級の場合1000万円
後遺障害等級8級の場合830万円
後遺障害等級9級の場合690万円
後遺障害等級10級の場合550万円
後遺障害等級11級の場合420万円
後遺障害等級12級の場合290万円
後遺障害等級13級の場合180万円
後遺障害等級14級の場合110万円


さらに、切断事故がなければ将来もっと仕事をしてお金を稼げたはずです。

それが稼げなくなった損害を逸失利益といいます。

このように、指切断、腕切断、足切断の労災事故の場合には、様々な損害が発生することになります。

大切なことは、これらの損害を漏れなく請求することです。

残念ながら、会社は、被災労働者の側から請求しないものを支払ってくれることはありません。

また、裁判所も、原告が請求しない損害をわざわざ認定して支払を命じてくれることもありません。

損害は、被災労働者が主張しなければならないのです。

したがって、被災労働者は、自分がどんな損害を請求できるのかを知らなければならないのです。

ただ、法律の素人が損害を漏れなく請求するのはかなり難しいでしょう。

したがって、労災の精通した弁護士にぜひ相談するようにしてください。

指切断、腕切断、足切断の裁判例の紹介

過去の労働災害(労災)の事例で、指や腕、足などの切断の場合、どのような損害賠償がなされたか、ご紹介します。

労働災害(労災)による指の切断事例

【東京地裁平成27年4月27日判決】 工場内のプレス機械で作業中の工場長であった労働者が左手をプレス部分に差し込んで左4指切断の負傷をした労災事故。

工場長は、労災の後遺障害等級8級が認定されました。

そこで工場長は、会社に対し慰謝料その他、合計で5521万1258円の損害賠償を求めて提訴しました。

判決は、会社がプレス機に安全カバー及び自動停止装置を取り付けなかったことは、安全配慮義務違反であるとして、会社の損害賠償責任を認めました。

しかし工場長は、10年近くにわたって被告の工場長であり、他の従業員の安全も管理すべき立場にあったところ、別の事故があったにもかかわらず、積極的に本件プレス機に安全カバーや自動停止装置を取り付けるように取り組まなかった過失があるとして、工場長の過失割合を4割としました。

その結果、裁判所は会社に対し、1651万7514円の損害賠償を命じました。

【津地方裁判所昭和62年4月30日判決】 事案は、工場内において、光線式安全装置を不作動の状態とされたプレス機で、プレス加工作業に従事している際、成型されたプーリーを右手で取り出し中、不意にスライドが下降して労働者の右手第一指から第四指までを切断したものです。

裁判所は、工場内における本件プレス機の作業中には、スイッチの戻り不良等によりスライドが誤って下降した場合に危険が伴うとして、会社から従業員に対して、事前にプレス機の作業をする際には、必ず光線式安全装置の作動の下に作業を行うことを徹底すべき注意義務、またスイッチの戻り不良が生じることがないようにするとともに、プレス成型された製品を手で取り出さなくとも作業ができるようにする注意義務があったにもかかわらず、これらを怠ったとして、慰謝料など損害賠償義務を認めました。

労働災害(労災)による腕の切断事例

【大阪地裁平成13年2月28日判決】 知的障害者が勤務先の工場においてクリーニング作業中、機械に右腕を挟まれ右上肢完全切断等の傷害を負った労災事故。

労働者は、勤務先の会社、代表取締役、本件機械の保守・修理・点検を共同で行っていた別の2会社に対し、慰謝料など合計で1億円の損害賠償を求めて提訴しました。

判決は、勤務先会社は安全装置が作動しない状態であることを認識しつつ、労働者を工場でプレス加工作業に従事させ、本件事故に至ったことに加え、労働者は安全装置が故障しており、短絡されている状態であることを知らされていなかったもので、勤務先会社が安全配慮義務に違反していたと判断し、代表取締役にも監督義務違反を認めました。

また、機械の保守・修理等を共同で行っていた2社については、最低限度の要請として、本件機械を作業者の生命・身体の安全を確保できるような状態に維持しておくべき共同の注意義務を有していたこと、また、その下請も含めた従業員らに対しても、本件機械の人体への危険性を周知させ、安全確保への徹底した指導・監督を行うべき共同の注意義務があったのに、これを怠った、として、損害賠償責任を認めました。

その結果、裁判所は被告らに対し、連帯して、4376万3640円の損害賠償を命じました。

労働災害(労災)による足(脚)の切断事例

【東京地裁昭和59年10月22日判決】 労働者が、工場でバイブロ機を使用して右作業に従事中、鋼矢板にかませて仮置きしてあったバイブロ機が倒れてきて、バイブロ機と鋼矢板との間にはさまれて川中に落下し、左手、左足を関節より上で切断する傷害を負い、労働者災害補償保険後遺障害等級1級が認定された労災事故です。

被災労働者は、会社等に対し、慰謝料など損害賠償として、合計8243万1985円を支払うよう求めました。

裁判所は、本件の該当作業はその手順を誤れば、危険を伴うものであったから、被告らは、作業の手順、手順以外のことを行った場合の危険性について周知徹底させ、作業手順どおりに施工すべきことを厳重に注意し、従業員に対して十分に安全教育すべき義務を負っていたというべきであるとし、本件現場において打ち合わせたとおりの作業が行われているか否かを監視する義務があったとしました。

その上で、会社等は、それらの義務に違反したため、損害賠償責任を負うと判断しました。

その結果、裁判所は、会社等に対し、連帯して、慰謝料など合計で、約4800万円を支払うよう命じました。

このように、労働災害(労災)で指や腕や足を切断の後遺障害が残った場合には、労災保険給付だけでなく、会社に対して安全配慮義務違反を理由として損害賠償請求ができる場合があります。

ただし、使用者側から過失相殺の主張が出てくることがほとんどであり、その争いで、慰謝料額などの賠償額が大きく変わってしまいます。

指や腕や足を切断という後遺障害が残った場合には、その後の仕事に大きな影響があります。

将来もらえるはずだった収入を得られなくなることが多いと思います。

損害賠償額も高額です。

したがって、適正な賠償額を得られるよう、指などの切断における後遺障害等級が正しいかどうか、正しい後遺障害を前提として、損害賠償額が適正かどうかについて、弁護士に相談することが大切です。

労災事故に精通した弁護士をどう探すか?

では、指切断、腕切断、足切断という重い労災事故の場合、どうやって弁護士を探せばよいでしょうか。

実は、弁護士にも得意分野、不得意分野があります。

労災事故の損害賠償を行うには、損害賠償という法律の知識だけでは不十分です。

医学的な知識や後遺障害等級の知識、という法律以外の知識が必要になってきます。

つまり、司法試験では勉強しない知識が必要ということです。

知り合いの弁護士や紹介された弁護士に依頼したら、実は、労災事故を扱ったことがなかった、ということがあるかもしれません。

したがって、弁護士に依頼する前には、労災事故、得に後遺障害等級認定が絡む重傷事故を扱った経験があるかどうか、聞いてみるといいでしょう。

今のところ、労災事故に精通した弁護士を探すには、インターネットで検索するのが安全ではないか、と思います。

労災事故に関するホームページを有する弁護士が、まさか労災事故を扱ったことがない、ということはないと思います。

なお、みらい総合法律事務所では、労災事故に関し、死亡事故と後遺症事案に特化することにより専門性を高めています。

該当する方は、ぜひご相談ください。

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