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労働災害(労災)で、失明してしまった場合の慰謝料額は?<弁護士解説>

最終更新日 2024年 05月30日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠

労働災害(労災)で、失明してしまった場合の慰謝料額は?<弁護士解説>
この記事を読むとわかること
 
業務中の傷害(ケガ)により失明した場合の労災認定や給付金の種類、会社に損害賠償請求できるか、などについて解説します。

労災認定を受けた場合、次のような給付金を受けることができます。

  • ①療養補償給付
  • ②休業補償給付(休業給付)
  • ③傷病補償年金(傷病年金)
  • ④障害補償給付(障害給付)
  • ⑤介護補償給付(介護給付)など
 
しかし、この金額だけでは不足するため、被災者の方は会社に対して「安全配慮義務違反」を理由に慰謝料や逸失利益を請求することができる場合があります。

労災で失明をした場合は、その程度によって、1級1号、2級1号、3級1号、5級1号、7級1号、8級1号の後遺障害等級が認定される可能性があります。

本記事では、労災で失明した場合の後遺障害等級と慰謝料に関する裁判例も解説します。

労災保険の仕組みと補償内容を解説

労災保険の特徴とは?

傷害(ケガ)を負った場合、多くの人は健康保険を使って、入院・通院をして治療を受けるでしょう。
では、労災(労働災害)の場合はどうでしょうか?

被災者の方は健康保険と労災保険のどちらも使うことができますが、すぐに労災保険を使うことができないので悩んでしまうケースがあるかと思います。

そこで労災保険の特徴を知っておくことは大切です。

<労災保険の特徴について>
  • ☑労災の被災者の方が労災認定を受けた場合、労災保険を使うことができます
  • ☑「労働基準法」や「労働者災害補償保険法(労災保険法)」といった法律により災害補償制度が定められているため、労災保険では国からさまざまな補償(給付)を受けることができます
  • ☑労災保険は労働者やその家族を守るための保険制度で、従業員を1人でも雇用している事業主には加入が義務付けられています
  • ☑アルバイトやパートタイマーなど雇用形態に関係なく労災保険の加入対象となり、一定の要件を満たしていれば労災保険の給付を受けることができます。
  • ☑労災保険のメリットの1つは、健康保険とは違い、労働者の自己負担額がないことです。
  • ☑ただし、労働保険指定医療機関ではない病院などで受診した場合は、まず被災者の方が治療費を立て替えて支払う必要があります。

参考資料:「労働災害が発生したとき」(厚生労働省)

労災保険の補償内容

労災保険では、次のような補償を受けることができます。

療養補償給付

診察、治療などに対する補償。

休業補償給付(休業給付)

ケガの治療ために労働できない場合、休業の4日目から休業が続く間の補償が支給される。

傷病補償年金(傷病年金)

治療開始後1年6か月を経過しても治らない場合、傷病等級に応じて支給される。

障害補償給付(障害給付)

ケガが治った、もしくは症状固定(それ以上の回復が見込めない状態)後に後遺障害等級(1~14級)に基づいて支給される。

介護補償給付(介護給付)

後遺障害等級が1級と2級で常時介護が必要になった場合の補償。

遺族補償年金(遺族年金)※死亡の場合

労働者が死亡した場合、遺族に支給される。

葬祭料(総裁給付)※死亡の場合

労働者が死亡した場合、支給される葬祭費。

労災保険給付の種類と内容の一覧表
保険給付の種類 こういうときは 保険給付の内容 特別支給金の内容
療養補償給付
療養給付
業務災害又は通勤災害による傷病により療養するとき
(労災病院や 労災指定医療 機関等で療養を受けるとき)
必要な療養の給付 
業務災害又は通勤災害による傷病により療養するとき
(労災病院や労災指定医療 機関等以外で療養を受けるとき)
必要な療養費の全額
休業補償給付
休業給付
業務災害又は通勤災害による傷病の療養のため
労働することができず、賃金を受けられないとき
休業4日目から、休業1日につき給付基礎日額の60%相当額 休業4日目から、休業1日につき給付基礎日額の20%相当額
障害(補償)給付 障害補償年金
障害年金
業務災害又は通勤災害による傷病が治った後に
障害等級第1級から第7級までに該当する障害が残ったとき
障害の程度に応じ、
給付基礎日額の313日分から131日分の年金
(障害特別支給金)
障害の程度に応じ、342万円から159万円までの一時金
(障害特別年金)
障害の程度に応じ、算定基礎日額の313日分から131日分の年金
障害補償一時金
障害一時金
業務災害又は通勤災害による傷病が治った後に
障害等級第8級から第14級までに該当する障害
障害の程度に応じ、給付基礎日額の
503日分から56日分の一時金
(障害特別支給金)
障害の程度に応じ、65万円から8万円までの一時金
(障害特別一時金)
障害の程度に応じ、算定基礎日額の503日分から56日分の一時金
遺族(補償)給付 遺族補償年金
遺族年金
業務災害又は通勤災害により死亡したとき 遺族の数等に応じ、給付基礎日額の
245日分から153日分の年金
(遺族特別支給金)
遺族の数にかかわらず、一律300万円
(遺族特別年金)
遺族の数等に応じ、算定基礎日額の245日分から153日分の年金
遺族補償一時金
遺族一時金
(1)遺族(補償)年金を受け得る遺族が ないとき
(2)遺族補償年金を受けている方が失権し、かつ、
他に遺族(補償)年金を受け得る者がない場合であって、
すでに支給された年金の合計額が
給付基礎日額の1000日分に満たないとき
給付基礎日額の1000日分の一時金(ただし、(2)の場合は、
すでに支給した年金の合計額を差し引いた額)
(遺族特別支給金)
遺族の数にかかわらず、一律300万円
(遺族特別一時金)
算定基礎日額の1000日分の一時金(ただし、(2)の場合は、
すでに支給した特別年金の合計額を差し引いた額)
葬祭料
葬祭給付
業務災害又は通勤災害により死亡した方の葬祭を行うとき 315,000円に給付基礎日額の30日分を加えた額
(その額が給付基礎日額の60日分に満たない場合は、
給付基礎日額の60日分)
傷病補償年金
傷病年金
業務災害又は通勤災害による傷病が
療養開始後1年6ヶ月を経過した日又は同日後において
次の各号のいずれにも該当することとなったとき
(1)傷病が治っていないこと
(2)傷病による障害の程度が傷病等級に該当すること
障害の程度に応じ、給付基礎日額の
313日分から245日分の年金
(傷病特別支給金) 障害の程度により114万円から
100万円までの一時金 (傷病特別年金) 障害の程度により
算定基礎日額の313日分から245日分の年金
介護補償給付 障害(補償)年金又は傷病(補償)年金受給者のうち
第1級の者又は第2級の者(精神神経の障害及び胸腹部臓器の障害の者)
であって、現に介護を受けているとき
常時介護の場合は、介護の費用として支出した額
(ただし、171,6500円を上限とする)。
ただし、親族等により介護を受けており介護費用を支出していないか、
支出した額が75,290円を下回る場合は75,290円。
随時介護の場合は、介護の費用として支出した額(ただし、85,780円を上限とする)。
ただし、親族等により介護を受けており介護費用を支出していないか、
支出した額が37,600円を下回る場合は37,600円。
介護給付 金受給者のうち第1級の者又は第2級の者
(精神神経の障害及び胸腹部臓器の障害の者)
であって、現に介護を受けているとき
出した額(ただし、171,6500円を上限とする)。
ただし、親族等により介護を受けており介護費用を支出していないか、
支出した額が75,290円を下回る場合は75,290円。
随時介護の場合は、介護の費用として支出した額(ただし、85,780円を上限とする)。
ただし、親族等により介護を受けており介護費用を支出していないか、
支出した額が37,600円を下回る場合は37,600円。
二次健康診断等給付 定期健康診断等の結果、脳・心臓疾患に関連する
一定の項目について異常の所見があるとき
二次健康診断。特定保健指導
二次健康診断の結果に基づく医師又は保健師の保健指導

参考資料:「労災保険給付の概要」(厚生労働省)

労災の手続きはどうすればいい?

業務中に傷害(ケガ)を負った場合は、次のようなステップで手続を進めていきます。

病院に行って治療を受ける

  • ・業務中にケガを負った場合は必ず病院に行き、診察・治療を受けます。
  • ・労災の場合は保険証が使えないことに注意が必要です。

会社に報告する

まずは労働者(被災者)から会社に労働災害が発生したことを報告します。

労災保険の請求手続き(請求書類の作成・準備・提出)

  • ・原則、労災にあった本人または家族が行ないます。
    ただし、会社には労災申請時の助力義務があるため、できれば書類の作成は会社主導でお願いしたほうがいいでしょう。
  • ・請求書は会社の所在地を管理する労働基準監督署、または厚生労働省のWebサイトからダウンロードできます。
  • ・各請求書には事業主証明欄があるので、そちらの箇所は会社に記入してもらう必要があります

労働基準監督署長に請求書などを提出

・労災保険の請求書や各種必要書類を労働基準監督署長に提出します。

労働基準監督署長による調査と認定

必要書類を提出すると労働基準監督署長が調査を開始し、労働災害として認められれば労災保険給付が行なわれます。

労災認定がされなかった場合は審査請求

  • ・労災認定が行なわれなかった場合は、「審査請求」をすることができます。
  • ・審査請求は、労災保険給付の決定があったことを知った日の翌日から起算して3か月を経過した時は請求することができないので注意してください。

参考資料:「労災保険給付に関する決定(不支給決定や障害等級の決定など)に不服がある場合、どうしたらよいでしょうか。」(厚生労働省 )

被災者は労災給付以外に慰謝料なども受け取れる!?

労災認定を受けると、被災者の方は各種給付金などを受けることができますが、じつはそれ以外にも受け取ることができるものがあります。

労災事故の原因に会社の責任が認められる場合は、労災補償給付申請とは別に会社に対して慰謝料などの損害賠償請求をすることができます

<労災保険の給付>
労災認定を受けていれば過失割合に関わらず必ず支払われるが、金額は一定。

<損害賠償金>
  • ・労災保険からの給付金だけでは損害賠償が足りない場合、慰謝料や逸失利益などを会社に請求することができる。
  • ・ただし、労災認定がされているだけで認められるものではなく、会社に対して請求して交渉していく必要がある。

被災者の方が受け取るべき金額は労災保険からの給付額を超える場合が一般的だといえます。

そうした場合、労災事故について会社側に非があるのであれば、トータルの損害額とご自身の過失の割合に応じて、適正額を全額受け取る権利が被災者の方にはあるのです。

そこで次からは、労災により失明してしまった場合の損害賠償請求について解説していきます。

安全配慮義務に基づく損害賠償請求

仕事の種類や内容によっては、身体に傷害(ケガ)を負ってしまうことがあり、特に現場作業などでは物が眼に入ったり、眼に刺さるといった事故により失明してしまう場合があります。

みらい総合法律事務所にご相談いただく中にも、作業中に鉄や木、石の小さなかけらが眼に当たったり、入ったりしたために失明してしまった事例がいくつもあります。

このような危険がある場合、会社としては当然に危険が予想されるわけですから、安全教育を実施するとともに、その危険性について説明し、さらにゴーグルの着用や飛散防止装置をつけるなど、作業員の安全に配慮する義務があります。

これを「安全配慮義務」といいます。
根拠となる条文は次のものです。

「労働契約法」
第5条(労働者の安全への配慮)
使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

「労働安全衛生法」
(事業者の講ずべき措置等)
第24条
事業者は、労働者の作業行動から生ずる労働災害を防止するため必要な措置を講じなければならない。

また、裁判例には次のものがあります。
「労働者が労務提供のため設置する場所、設備もしくは器具等を使用し又は使用者の指示のもとに労務を提供する過程において、労働者の生命及び身体等を危険から保護するように配慮すべき義務」(川義事件 最高裁判決)。

業務に起因して失明ということになれば労災認定がされ、労災保険から保険給付を受けることになりますが、失明であれば将来の仕事にも影響がでますし、受けた精神的損害から考えても、労災保険給付だけではとてもまかなえない損害が発生します。

そして、会社が安全配慮義務を怠り、それを原因として労働者が労働災害(労災)により失明をしてしまった場合には、会社には安全配慮義務違反として労働者が被った損害を賠償する責任が発生するわけです。

失明の場合の後遺障害等級について

失明で認定される労働災害(労災)の後遺障害等級は、次のようになります。

<労災における後遺障害等級表(労働基準法施行規則別表第2)>
1級1号 両眼が失明したもの
2級1号 1眼が失明し、他眼の視力が0.02以下になったもの
3級1号 1眼が失明し、他眼の視力が0.06以下になったもの
5級1号 1眼が失明し、他眼の視力が0.1以下になったもの
7級1号 1眼が失明し、他眼の視力が0.6以下になったもの
8級1号 1眼が失明し、または1眼の視力が0.02以下になったもの

労災で失明した場合の慰謝料計算と相場金額について

被災者の方が受け取れる慰謝料は2種類ある

労災で失明した場合に被災者の方が受け取ることができる慰謝料は以下の2種類です。

入通院慰謝料(傷害慰謝料)

傷害(ケガ)を負った被害者の方の精神的苦痛に対して支払われる慰謝料。

後遺障害慰謝料

後遺症が残り、後遺障害等級が認定された場合に支払われる慰謝料。

【関連記事】
労災事故の慰謝料の相場と慰謝料を増額する方法
 

後遺障害慰謝料の相場金額を一覧表で確認

後遺障害慰謝料は、1級から14級の等級によってあらかじめ概ねの金額が決められていて、後遺障害が重度なほど金額は大きくなります。

<後遺障害慰謝料の一覧表>
後遺障害等級1級 2800万円
後遺障害等級2級 2370万円
後遺障害等級3級 1990万円
後遺障害等級4級 1670万円
後遺障害等級5級 1400万円
後遺障害等級6級 1180万円
後遺障害等級7級 1000万円
後遺障害等級8級 830万円
後遺障害等級9級 690万円
後遺障害等級10級 550万円
後遺障害等級11級 420万円
後遺障害等級12級 290万円
後遺障害等級13級 180万円
後遺障害等級14級 110万円
なお、慰謝料以外にも被災者の方が受け取ることができるものに「後遺障害逸失利益」があります。

後遺障害逸失利益というのは、ケガによる後遺障害がなければ将来的に得られていたはずだった利益(収入)のことです。

慰謝料と並んで逸失利益も金額が大きくなる損害項目ですから、正しい金額を受け取るべきです。

【関連記事】
労災の後遺障害と逸失利益│職業別の計算方法と早見表
 

労災による失明で損害賠償を争った裁判例

次に、労災の失明で慰謝料が認められた裁判例を紹介します。

<横浜地裁平成19年6月28日判決>
多摩川の堤防の草刈作業に従事していたアルバイト作業員が、他の作業員の刈払機が飛散させた石様の異物が左眼に当たって失明した労災事故。

作業員には労災の後遺障害等級8級1号が認定されたため、派遣先の下請会社と元請会社に対し6,589万5,109円の損害賠償を求めて提訴しました。

判決は、派遣先の下請会社と元請会社の安全配慮義務を認めたうえで、
  • ・作業員が刈払機の刃で足を切るおそれがあるから刈払機による作業場所には近付かないようにと注意されたのみで、本件作業に伴う事故の危険性については教えられていないこと、
  • ・ゴーグルの着用や刈払機による作業場所との間に確保しておくべき距離などについて何ら指示を受けないまま本件作業に従事していたこと、
などから、下請会社などが新規入場者教育や安全管理ミーティングなどの機会に周知徹底すべきものであったのに、その周知徹底を怠ったとして、安全配慮義務違反を認めました。

最終的な損害賠償額は、4,794万4,608円が認められています。

【関連記事】
労災事故が起きたときの示談交渉の基本・解決までの流れ
 

会社との示談交渉がもめた場合は弁護士に相談・依頼するべき

労災の被害にあった方は労災保険からの給付金だけでは補償は十分とはいえないので、今後の生活を考えれば、やはり慰謝料や逸失利益をできるだけ多く受け取りたいと考えておられるでしょう。

しかし、会社への慰謝料等の請求については難しい問題があります。

まず、会社は営利法人であれば利益の追求を考えるので、支出となってしまう被災者の方への慰謝料などは、できるだけ低くしたいという力が働くことです。

そのために示談交渉を行なうわけですが、会社としては被害者の方の主張を簡単には受け入れないという現実もあります。
使用者(会社)側から過失相殺(事故の責任の割合によって慰謝料などの金額を減額してくること)の主張が出てくることがほとんどであり、その争いで賠償額が大きく変わってしまいます。

示談交渉が長引けば、それだけ精神的なストレスも増えますし、納得のいく金額を得られないかもしれないという不安も大きくなってしまうでしょう。
また、今後も同じ会社で働き続けようと考えている場合は、やはり働きにくくなるなどの状況が起きることが考えられます。

それらの心理的抵抗との兼ね合いで、会社に対して損害賠償請求するかどうかを決めていくことになると思いますが、いずれにせよ労災問題を抱えてしまった場合は、まずは弁護士に相談されることをおすすめします。

労災問題に詳しい弁護士であれば、

  • ・労災給付金の請求などの相談
  • ・後遺障害等級が正しいかどうかの確認
  • ・会社に損害賠償請求できるか、するべきかどうかの判断
  • ・慰謝料や逸失利益などの正確な金額算定
  • ・相談者の代理人としての示談交渉
  • ・示談交渉が決裂した場合の裁判での解決

など、被災者の方のお困り事に対応できるからです。

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労働災害(労災)を弁護士に相談依頼するメリット・デメリット

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