労災事故被害者のための弁護士による労働災害SOS

過労死は、どのような場合に労災認定されるか?


長時間の過重労働による過労死の労災認定基準について法的に解説します。

過労死の労災認定については厚生労働省の「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準」という行政通達(平13・12・12 基発第1063号)を基準とします。

通達とは行政機関内部の文書で、上部組織が下部組織や職員に対して、法令の統一的見解や解釈、事務取扱上の基準などを示した文章です。
国民を法的に拘束するものではありませんが、労働行政においてはかなり広い裁量を認められているため、事実上は拘束力を有している通達も多くあります。

この通達は、かなりボリュームのある内容なので以下にポイントをまとめながら、労災と認定について解説していきます。

労災とは?

労働者の業務中の負傷、疾病、障害、死亡を「労働災害(労災)」といいます。

さらに労災には通勤中でのケガ、病気なども含み、これを「通勤災害」、業務中のものを「業務災害」ともいいます。

業務災害では、業務と労働者の負傷、疾病、障害、死亡との間に因果関係がある場合に労災と認められます。
その際には、2つの基準を中心に判断されます。

・業務遂行性=労働者が使用者の支配下にある状態
・業務起因性=業務に内在する危険性が現実化し、業務と死傷病の間に一定の因果関係があること。

過労死とは?

業務災害のうち、病気によるものを「疾病災害」といい、次の3種類があります。

➀ 災害性疾病=業務遂行中での突発的事故に起因する疾病
➁ 職業性疾病=じん肺症、脛肩腕症候群、潜水病、皮膚疾患、中皮腫などの職業病
➂ 作業関連疾患=遺伝や生活習慣などにより、その労働者にもとから内在していた私病が業務起因で発症、または増悪した場合、過重な業務による心理的負荷から精神障害を発症した場合など


過労死とは、➂の作業関連疾患の典型例といえます。
長時間の過重労働等が起因となって、脳血管疾患や虚血性心疾患を発症し死に至るものです。

過労死の基準とは?

行政通達の「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く)の認定基準」によると、過労死の考え方や疾病の種類、認定基準は次のようになっています。

過労死の基本的な考え方

・業務による明らかな過重負荷が加わることによって、血管病変等がその自然経過を超えて著しく増悪し、脳・心臓疾患が発症する場合があり、そのような経過をたどり発症した脳・心臓疾患は、その発症に当たって、業務が相対的に有力な原因であると判断し、業務に起因することの明らかな疾病として取り扱う

・このような脳・心臓疾患の発症に影響を及ぼす業務による明らかな過重負荷として、発症に近接した時期における負荷のほか、長期間にわたる疲労の蓄積も考慮する。

・業務の過重性の評価に当たっては、労働時間、勤務形態、作業環境、精神的緊張の状態等を具体的かつ客観的に把握、検討し、総合的に判断する。
(通達の本文より抜粋)

対象疾病

認定基準では、次の脳・心臓疾患を対象疾病としています。

1.脳血管疾患
➀ 脳内出血(脳出血)
➁ くも膜下出血
➂ 脳梗塞
➃ 高血圧性脳症

2.虚血性心疾患等
➀ 心筋梗塞
➁ 狭心症
➂ 心停止(心臓性突然死を含む。)
➃ 解離性大動脈瘤

認定要件

これは、業務の「過重性」を3段階で評価するものです。

1.発症直前から前日までの間において、発生状態を時間的及び場所的に明確にし得る異常な出来事に遭遇したこと。
2.発症に近接した時期において、特に過重な業務(以下「短期間の過重業務」という。)に就労したこと。
3.発症前の長期間にわたって、著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な業務(以下「長期間の過重業務」という。)に就労したこと。

異常な出来事とは?

異常な出来事とは次のものをいいます。

1.極度の緊張、興奮、恐怖、驚がく等の強度の精神的負荷を引き起こす突発的又は予測困難な異常な事態
2.緊急に強度の身体的負荷を強いられる突発的又は予測困難な異常な事態
3.急激で著しい作業環境の変化

異常な出来事と発症との関連性については、通常、負荷を受けてから24時間以内に症状が出現するとされています。
よって、発症直前から前日までの間を評価期間とします。

短期間および長期間の過重業務とは?

特に過重な業務とは、日常業務に比較して特に過重な身体的、精神的負荷を生じさせたと客観的に認められる業務をいいます。



短期間とは、発症前おおむね1週間を評価期間とします。
長期間とは、発症前おおむね6ヵ月間です。



また、特に過重な業務に就労したと認められるか否かについては、業務量、業務内容、作業環境等を考慮し、同僚労働者にとっても特に過重な身体的、精神的負荷と認められるか否かという観点から、客観的かつ総合的に判断します。



具体的な負荷要因としては次のものがあげられます。
・労働時間
・不規則な勤務
・拘束時間の長い勤務
・出張の多い勤務
・交代制勤務・深夜勤務
・作業環境(温度環境・騒音・時差)
・精神的緊張をともなう業務

労働時間の評価の目安

過労死の認定基準において、労働時間の評価の目安には「過労死ライン」が用いられます。
これは、健康障害リスクが高まるとする時間外労働時間を指すもので、
次のような基準となっています。



1.発症前の1ヵ月ないし6ヵ月間にわたって、時間外労働が、1ヵ月あたりおおむね45時間を超えて時間外労働長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まる。
2.発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合、業務と発症との関連性は強い。
(1日8時間勤務で1か月の労働日を20日とすると、1日4時間の時間外労働をして、1日12時間勤務が続く状態。又は労働日の20日各2時間の時間外労働と、1日10時間勤務で4日の法定外休日出勤という1日10時間勤務が続く状態)

3.発症前1ヵ月間におおむね100時間を超える時間外労働が認められる場合、業務と発症との関連性は強い。
(1日8時間勤務で1ヵ月の労働日を20日とすると、1日5時間の時間外労働をして、1日13時間勤務が続く状態。又は労働日の20日各2時間50分の時間外労働と、1日10時間50分勤務で4日の法定外休日出勤という1日10時間50分勤務が続く状態)



 

 

以上、労災における過労死の認定基準についてまとめました。

労災における過労死の場合、労災保険給付の他、会社に損害賠償請求できる場合もあります。
詳しくはこちらから。
https://www.rousai-sos.jp/kouishogai/karoushi.html
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