労災事故被害者のための弁護士による労働災害SOS

墜落事故による労働災害(労災)の慰謝料は?


ここでは、墜落事故による労働災害(労災)に基づく損害賠償について解説します。

労働者の雇用主である会社は、労働災害(労災)を防止する措置を講じなければなりません。

たとえば、雇用主である会社は、墜落の危険のある場所で労働者を労働に従事させるときは、労働者が墜落により負傷しないように墜落を防止するための措置を講じなければいけません。

具体的には、囲い、手すり、覆(おお)い等を設ける、安全に安全帯を取り付ける、防網を張る等の措置を講じて、労働者の墜落防止をしなければなりません。

かかる義務に違反し、労働者が墜落をして怪我や死亡等の損害を被るような労働災害(労災)が生じた場合には、安全配慮義務違反として、会社は、損害賠償責任を負うことになります。

労働者の墜落事故について、どのような場合に雇用主会社が労働災害(労災)による損害賠償責任を負うかについて、判例を紹介します。

大阪高等裁判所平成28年4月28日判決

この裁判は、足場の解体工事に従事していたところ、労働者が足場から墜落して、両手関節粉砕骨折等の傷害を負い、両手関節の可動域制限の後遺障害(併合第9級)が残った事案です。

労働者は、雇用主である会社および元請会社に対して安全配慮義務違反に基づく損害賠償として、雇用主会社の代表取締役に対して、会社法429条1項に基づく損害賠償請求として、連帯して3768万5161円の支払を求めました。

判決は、連帯して、1230万4477円の支払を命じました。

理由は、以下のとおりです。

まず、雇用主会社は、労働契約に基づき、労働者を使用し、指揮監督して本件解体工事を遂行しており、労働契約に付随する義務として、控訴人の身体の安全を守るべき安全配慮義務を負っていました。

雇用主会社は、高さ2メートル以上の墜落の危険のある本件足場での作業を命じていたから、控訴人が墜落により負傷しないように墜落を防止するための措置を講じなければならず、具体的には、親綱等の安全帯の取付け設備を設置する必要がありました(労働安全衛生規則519条2項、521条1項、564条1項4号ロ参照)。

しかし、雇用主会社は、これを怠ったので、安全配慮義務違反がある、と判断しました。

次に雇用主会社の代表取締役は、本件解体工事において作業員を直接指揮監督していたところ、取締役の任務として、雇用主会社に関連法令を遵守させ、安全帯のフックを取り付けるための親綱を設置し、作業員に安全帯を使用させるべき義務を負っていたところ、その義務を怠り、親綱を設置せず、安全帯が使用できない状況で控訴人に本件解体工事を行わせたことにより、本件事故を生じさせたことから、取締役としての任務を懈怠し、悪意または重過失により控訴人に対する安全配慮義務に違反したのであるから、会社法429条1項に基づく損害賠償責任を負うと判断しました。

次に、元請会社は、本件解体工事において、元請業者として、手回りの工具を除く全ての資材及び器具を準備・供給しており、本件解体工事における物的な安全管理設備を実質的に支配していたこと、本件事故以前から継続的に、下請業者として雇用主会社及びその従業員である本件被災者を利用していたほか、本件解体工事の現場に従業員を駐在させ、本件解体工事の進捗及び安全衛生管理について具体的な指示を与えるなどしていたことからすると、元請会社は、本件被災者との間で直接の雇用関係がなかったとしても、本件解体工事の労働安全衛生上の責任者として、本件被災者と特別な社会的接触関係に入ったものと評価すべきであり、信義則上の安全配慮義務を負う(民法1条2項、415条)にもかかわらず、親綱の設置に必要な設備を準備・供給しなかったのであり、かつ、本件解体工事の現場に駐在していた元請会社の従業員は、本件解体工事において墜落防止措置が確実に行われていることを監視し、墜落防止措置が行われていない場合には、墜落防止措置が行われるよう、指導を徹底するべきであったにもかかわらず、これらを怠ったので、安全配慮義務違反がある、と判断しました。

ただし、労働者は、本件事故当時、本件解体工事と同様の解体作業を長年にわたり多数回経験していた上、作業主任者としての資格を有していたのであるから、自身も墜落事故等の発生を回避するための配慮をすべき立場にあったといえること、親綱等に安全帯のフックを固定しない状況で投げ降ろしをすれば、墜落する危険性が高いことを十分に認識できたのに、そのような危険性が高い行為をして墜落したものといえるから、労働者の過失を5割とし、過失相殺しました。

福岡地方裁判所平成26年12月25日判決

この裁判は、雇用主会社と雇用契約を締結し、派遣先会社のプラントに派遣されて業務に従事していた労働者が、安全帯をつけずに本件プラントの鉄骨に置かれた道板に上ってパイプレンチでスクリューとモーターの連結部分を回す作業に従事していたところ、本件道板が二つに折れ、約3m30cmの高さからコンクリート土間に墜落した事案です。

労働者は、脊柱圧迫骨折の傷害を負い、脊柱に中程度の変形を残すものとして後遺障害等級8級、背部痛として後遺障害等級12級、左下肢の疼痛として、後遺障害等級14級に相当する後遺障害を残しました。

そこで、労働者は、本件は労働災害(労災)にあたるとして、雇用主会社と雇用主会社の社長、派遣先会社に対し、連帯して2353万1612円を支払うよう求めました。

判決では、雇用主会社と派遣先会社の責任を認め、連帯して695万2807円を支払うよう命じ、代表者の責任は否定しました。

まず、雇用主会社は、本件事故当時、本件プラントにおいて、従事する業務や作業の内容及び方法に関して具体的な指示を行っておらず、専ら派遣先会社にこれを委ねており、労働者が本件タンクに上ってパイプレンチ作業をしていることや本件道板の性状及び使用状況を十分把握していなかったこと、労働者に対し、高所作業における安全帯の装着を指示し、その所持の確認をしたことはあるものの、作業内容に照らした安全帯の使用実態を把握する措置やそれに基づく指導は行っていなかったとのことであり、本来であれば、労働者の具体的な従事業務を把握した上、本件道板が労働者の体重に耐え得るものか予め確認し、安全でない道板を撤去し、又はより頑健かつ安全なものと交換する等の義務や、本件道板上で作業しないこと及び作業時に安全帯を使用することについて労働者が遵守するよう管理監督すべき義務を負っていたにもかかわらず、これを怠ったものといえ、安全配慮義務に違反したものと判断しました。

次に、本件工場において、労働者の出退勤の管理や作業の内容・方法に関する具体的な指示は、専ら派遣先会社が行っていたものであり、本件事故時も、労働者が派遣先会社の指揮監督を受けて労働に従事していたことが認められることから、派遣先会社は、労働者との間で、特別な社会的接触の関係に入ったものといえ、労働者に対し、安全配慮義務を負っていたにもかかわらず、労働者に対して安全帯の使用を求めていなかったこと、労働者に対して本件プラントにおけるパイプレンチ作業の方法を指導した者は、安全帯を使用せずに本件道板の上で作業をしていたこと、派遣先会社は、本件道板の強度を確認していなかったことが認められにもかかわらず、派遣先会社は、本件道板が労働者の体重に耐え得るものか予め確認し、安全でない道板を撤去し、又はより頑健かつ安全なものと交換する等の義務や、本件道板上で作業しないこと及び作業時に安全帯を使用することについて労働者が遵守するよう管理監督すべき義務を負っていたにもかかわらず、これを怠ったものといえ、派遣先会社は、労働者に対する安全配慮義務に違反したものと判断しました。

しかし、労働者が安全帯を装着していれば本件事故による損害の発生及び拡大を防ぐことが可能であったこと、労働者は、安全帯を所持しており、これを装着することが容易であったこと、労働者は、本件プラント上のような高所における作業においては安全帯の装着が必要となることを知りながら装着を怠ったことからすれば、公平の見地から過失相殺をすべきであることなどを理由として、3割の過失相殺を認めました。

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