労働災害SOS|みらい総合法律事務所

爆発事故による労災の慰謝料額は?

最終更新日 2024年 02月20日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠

爆発事故による労災とは?

労働者が労働作業中に、作業現場において爆発事故が起き、怪我をし、あるいは死亡することがあります。この場合、労働者に損害が発生しますが、この損害は、誰が負担すべきものでしょうか。

爆発事故が全く予測できない不可抗力で起きるような場合は、その責任を雇用主である会社に負担させることはできません。

しかし、雇用主として労働者の生命身体に危害が生じないよう安全な状態で労働させるべき安全配慮義務があります。

会社が安全配慮義務に違反し、その結果、労働者に損害が発生した場合は、会社には労働契約の債務不履行に基づく損害賠償義務が生じます。

会社の債務不履行に基づく損害賠償義務を負担するには、会社に過失があることが必要です。
そして、過失があるといえるためには、結果が予見でき(予見可能性)、かつ、その結果を回避することが可能(結果回避可能性)であることが必要です。

そこで、爆発事故による労災損害賠償請求訴訟においては、会社の過失の有無が争われることになります。

爆発事故が問題となった裁判例

荏原製作所事件

第一審:大阪地裁平成3年10月21日判決(労判655-31)
控訴審:大阪高裁平成6年4月28日判決(判例タイムズ878-173)

労働者が市に勤務し、ゴミ処理プラントにおいて、灰出し作業をしており、残った灰を処理するために灰バンカーの点検口を開けて内部を点検していたところ、灰だまりを鉄棒で突き崩そうとしたところ、突然の灰の爆風を浴びて、約7.5メートル下の構内地面に落下し、脊椎損傷、性機能不全、顔面やけど、両眼内異物混入の傷害を負った事件です。

労働者は、雇用主とともに、本件プラントを建設した企業に対し、損害賠償請求をしたものです。
第一審判決では、予見可能性が争いとなりましたが、裁判所は、本件プラントの設計思想、設計の前提条件、当時の技術常識、当時の業界が到達している技術レベルおよび爆発事故を予見できたとは認められない、として、予見可能を否定しました。
その結果、労働者の損害賠償請求を認めませんでした。

控訴審判決では、本件プラントの建設会社に対しては、作業員が手摺りを越えて地面に墜落する危険があることは予見可能であった、として、墜落防止用措置を設置する義務を行ったとして、民法709条に基づく損害賠償責任を認めました。

そして、雇用主に対しては、本件事故当時、就業中に灰ブリッジが発生し、これを除去しなければ操業に支障が生じ、そのためには作業員が高所作業をする必要があるのに、十分な墜落防止設備を備えていない瑕疵があったとして、民法717条、国家賠償法2条により損害賠償責任を認めました。

その結果、雇用主および建設会社の連帯損害賠償責任を認め、合計で、3985万2188円の賠償金の支払いを命じました。

このほか、金庫取付販売を業とする会社の労働者コンビット(コンクリート壁に釘を打込む機械)を使用して銀行の金庫室外壁に防犯用コンクリートボードを取付ける作業中に、元来、圧縮空気を動力源とすべきコンビットの使用に圧縮酸素を動力源としたためコンビットが破裂し、重傷を負った事例において、「コンビットは、圧縮空気を動力源としてコンクリートに釘を打ち込む機械であって、使用の際には火花が飛散することもあり、その取扱説明書には、動力源としては圧縮空気を用いる旨及び使用時には火花が飛散することがあるので引火しやすいものや爆発しやすいものは遠ざけるべき旨の注意が記載されていることが認められ、一方酸素が支燃性を有し、空気中ではおだやかな燃焼にとどまるものも高濃度の酸素のもとでは激しく燃焼しときには爆発にまで至ることがあることは公知の事実であるから、右のようなコンビットを操作している従業員が負傷することがあることは」会社は予見できた、として、会社に2830万2068円の損害賠償を命じた判例(福岡地判昭和59年6月19日、判例時報1125号146頁)があります。

また、プロパンガス爆発事故につき、プロパンガス供給会社と同社から委託をうけて保安点検を実施した保安点検員に、未使用閉止弁にゴムキャップを装着せず、または装着するよう指示しなかつた義務違反を認めた判例(京都地判昭56年12月14日、判例タイムズ470号154頁)があります。

爆発事故による労災で会社の損害賠償責任が認められる場合

爆発事故があった時に、その原因が会社の安全配慮義務違反であるとして、会社に損害賠償責任が認められるためには、次の検討が必要となります。

①爆発事故の原因の特定(なぜ爆発が起こったか)
②会社は、爆発事故は予見することが可能であったか
③会社は、爆発事故を回避することが可能であったか
④設備が土地工作物である場合には、その設置又は保存に瑕疵があったか

上記の検討を経て、会社に義務違反が認められる場合には、会社に対して損害賠償請求が可能になる可能性があります。

当事務所の相談対象となる場合には、ぜひご相談いただければと思います。

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