労働災害SOS|みらい総合法律事務所

トラックやタクシーの運転手の過労死の慰謝料は?

最終更新日 2024年 03月29日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠

トラックやタクシーの運転手の労災による過労死について解説をします。

トラック運転手やタクシー運転手は、運転中、常に前後左右の動静を注意すべく精神的な緊張が継続します。

また、長時間の運転や不規則、深夜の継続的な運転など、肉体的精神的ストレスが過重になる場合があります。

さらに、運転席という狭い空間で長時間過ごさなければならないなどの精神的負担もあります。

そして、そのような過度な肉体的精神的な労働負担が誘因となって、くも膜下出血や脳梗塞、心筋梗塞、急性心不全などを発症し、死に至る場合があります。

この場合には、まず「過労死」の労災認定を求めることになります。

そして、長期間にわたる著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な業務に就労した場合には、過労死の労災認定がされます。

たとえば、次のような判断基準となります。

1.発症前の1ヵ月ないし6ヵ月間にわたって、時間外労働が、1ヵ月あたりおおむね45時間を超えて時間外労働長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まる。

2.発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合、業務と発症との関連性は強い。

3.発症前1ヵ月間におおむね100時間を超える時間外労働が認められる場合、業務と発症との関連性は強い。


上記、2及び3については、上記の時間に至らない場合でも、これに近い時間外労働を行った場合は、労働時間以外の負荷要因も十分に考慮して評価します。

過労死の労災認定がされると、遺族に対して、労災給付がされます。

さらに、会社が運転集に対して負っている「安全配慮義務」を怠った、ということになると、会社に対し、民事損害賠償の請求ができることになります。

労働契約法5条は、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と定めています。

また、最高裁昭和59年4月10日判決は、

「労働者が労務提供のため設置する場所、設備もしくは器具等を使用し、又は使用者の指示のもとに労務を提供する過程において、労働者の生命及び身体等を危険から保護するよう配慮すべき義務」がある、

としています(川義事件)。

これに違反した場合には、会社は、トラック運転手やタクシー運転手の過労死について損害賠償責任があることになり、遺族に対し、慰謝料など損害賠償をする義務があります。

そして、トラック運転手の場合には、タコグラフなど運転時間に関する証拠が残っていることが多いです。

では、過去の裁判例を見てみましょう。

大阪地裁平成28年4月14日判決

トラック運転手が、過重な長時間労働によって心疾患を発症し、勤務中に急死した事件です。

遺族は、長時間労働が常態化して業務が過重になっていたにもかかわらず、会社がこれを是正しなかった、として、約7800万円の損害賠償を求めました。

裁判所の認定では、トラック運転手は、死亡前3ヶ月間について、時間外労働が約120~160時間であったと認定しました。

そして、会社は、トラック運転手の長時間労働を認識しており、かつ、長時間労働に問題意識があったにもかかわらず、過重な業務負担を軽減すべき注意義務を怠った、として、安全配慮義務違反を認めました。

その結果、会社に対し、約6000万円の損害賠償を命じました。



このように、運転手の過重な労働が原因となって過労死に至った場合には、会社に対して多額の損害賠償を請求することができる場合があります

このような場合には、ぜひご相談いただければと思います。

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