労災事故被害者のための弁護士による労働災害SOS

医師(勤務医、研修医)の過労死による慰謝料は?


勤務医師や研修医師の労災による過労死について解説をします。

医師が不足する病院の勤務医や研修医は、過酷な労働を強いられる場合があります。

日直の他、宿直や長時間の手術、オンコールによる呼び出しなど、患者の生命身体の安全に直結する業務であることから、肉体的精神的ストレスが過重にかかる場合がある。

そして、そのような過度な労働負担が誘因となって、くも膜下出血や脳梗塞、心筋梗塞、急性心不全などを発症し、死に至る場合があります。

この場合には、まず「過労死」の労災認定を求めることになります。

発症前の長期間にわたって、著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な業務に就労した場合には、過労死の労災認定がされます。

この場合には、発症前のおおむね6ヶ月間で判断します。

たとえば発症前1ヶ月間におおむね100時間を超える時間外労働がある場合や、発症前2ヶ月間ないし6ヶ月間にわたって、1ヶ月当たりおおむね80時間を超える時間外労働がある場合は、業務と発症との関連性は強い、と判断されます。

過労死の労災認定がされると、遺族に対して、労災給付がされることになります。

その上で、遺族は、労災による過労死について、病院に対し、民事の損害賠償請求をできる場合があります。
これは、病院が、「安全配慮義務」を怠ったことを理由にします。

労働契約法5条は、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と定めています。

また、最高裁昭和59年4月10日判決は、「労働者が労務提供のため設置する場所、設備もしくは器具等を使用し、又は使用者の指示のもとに労務を提供する過程において、労働者の生命及び身体等を危険から保護するよう配慮すべき義務」がある、としています(川義事件)。

これに違反した場合には、病院は、勤務医や研修医の過労死について損害賠償責任があることになり、遺族に対し、慰謝料など損害賠償をする義務があります。

では、過去の裁判例を見てみましょう。

【関西医大事件】(大阪高裁平成16年7月15日判決)

死亡した研修医は、平成10年3月に大学卒業後、見学生になり、6月から臨床研修医として研修を開始しました。

研修の内容は、医療見学のほか、点滴、採血、シュライバー業務、指導医師不在の場合の患者対応等でした。

研修時間は午前7時半から23時ころまでであり、休日も頻繁にポケットベルで呼び出されるなど、平均して1ヶ月300時間以上労働していました。

そして、8月16日、自宅で急死した、ということです。

そこで、遺族は、病院に対し、1億7200万円の損害賠償を求めて提訴しました。

この裁判は、高裁まで争われ、大阪高裁平成16年7月15日判決は、病院に対し、合計で約8400万円の損害賠償を命じました。

病院の安全配慮義務の内容としては、病院は、研修医に対し、「研修業務の遂行による疲労の蓄積により過労状態に陥り,心身の健康が害されることがないように,研修時間や研修の内容密度が適切であるよう配慮するか,あるいは,それが難しければ,研修医の健康管理に注意を払い,少なくとも定期的に大学入学時に実施したものと同程度の内容(心電図検査は当然含まれる。)の健康診断を実施するなど,一定の措置を講じるべき義務を負っていた」と判断し、病院は、この義務に違反した、と述べました。

但し、研修医も医師免許を取得した医師である以上、自らの健康保持に努めるべき義務があるとして、2割の過失相殺を認めました。

【麻酔科医事件】(大阪高裁平成20年3月27日判決)

病院の麻酔科医が、深夜に帰宅して数時間後に、突発性心筋症を原因とする急性心機能不全で死亡したことから、遺族が病院に対し、労災による過労死が原因であるとして、損害賠償請求をした事件です。

大阪高裁平成20年3月27日判決は、病院に対し、約7700万円の損害賠償を命じました。

裁判所が認定した事実によると、死亡前3ヶ月間の平均時間外労働時間は、1ヶ月あたり103時間15分、死亡前6ヶ月間の平均時間外労働時間は、1ヶ月あたり116時間7分30秒ということでした。

裁判所は、病院は、麻酔科医の死亡を含む何らかの健康状態の悪化を予見できたのに、麻酔科医の負担軽減を図ったり、人員体制を見直したりする等しなかった病院には、安全配慮義務違反がある、と認定しました。


以上のように、勤務医や研修医の労働は、過度に及ぶことがあり、過重労働が原因となって死亡に至った場合には、労災認定の他、病院に対して損害賠償請求できる場合があります。

そのような場合には、すぐにご相談いただければと思います。

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