労働災害SOS|みらい総合法律事務所

高次脳機能障害

最終更新日 2019年 05月15日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠

高次脳機能障害の自賠責後遺障害等級

高次脳機能障害の後遺障害等級は、神経系統の障害に分類され、具体的には「」の症状が該当します。
脊髄損傷の後遺障害
1級3号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの

「身体機能は残存しているが高度の痴呆があるために、 生活維持に必要な身の回り動作に全面的介助を要するもの」
※生活維持に必要な身の回り動作
=食事・入浴・用便・更衣等
2級2の2号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの

「著しい判断力の低下や情動の不安定などがあって1人で外出することができず、日常の生活範囲な自宅内に限定されている。身体動作的には排泄、食事などの活動を行うことができても、生命維持に必要な身辺動作に、家族からの声掛けや看視を欠かすことができないもの」
3級3号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの

「自宅周辺を1人で外出できるなど、日常の生活範囲は自宅に限定されていない。また声掛けや、介助なしでも日常の動作を行える。しかし記憶や注意力、新しいことを学習する能力、障害の自己認識、円滑な対人関係維持能力などに著しい障害があって、一般就労が全くできないか、困難なもの」
5級1の2号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの

「単純くり返し作業などに限定すれば、一般就労も可能。ただし新しい作業を学習できなかったり、環境が変わると作業を継続できなくなるなどの問題がある。このため一般人に比較して作業能力が著しく制限されており、就労の維持には、職場の理解と援助を欠かすことができないもの」
7級3号 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの

「一般就労を維持できるが、作業の手順が悪い、約束を忘れる、ミスが多いなどのことから一般人と同等の作業を行うことができないもの」
9級7の2号 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されているもの

「一般就労を維持できるが、問題解決能力などに障害が残り、作業効率や作業持続力などに問題があるもの」

高次脳機能障害の後遺障害のポイント

    高次脳機能障害について


    高次脳機能障害とは、交通事故によって頭部外傷を受け、意識障害を起こし、脳質拡大や縮小等の過程を経て、その回復後に認知障害(記憶力障害、集中力低下など)や人格変性(攻撃性、幼稚性など)が生じた状態をいいます。

    高次脳機能障害認定のポイント


    高次脳機能障害の疑いがある場合には、調査事務所は、「頭部外傷後の意識障害についての所見」、「脳外傷による精神症状等についての具体的な所見」を医療機関に送付し、被害者の関係者に対して「日常生活状況報告表」を送付します。これらの資料に基づき高次脳機能障害に該当するかの審査がなされます。

    審査においては、(1)意識障害の有無とその程度、(2)画像所見として、急性期における脳内出血の有無、(3)脳室拡大、縮小の有無、(4)その後の症状の経過、等が重要なポイントとなります。

    意識障害

    臨床上、脳外傷による高次脳機能障害は、頭部外傷による意識障害の後に出現しやすいと言われています。
    一時性びまん性脳損傷の場合には、事故直後に意識障害が発生しますが、二次性びまん性脳損傷の場合には、事故後しばらくして意識障害が発生します。

    意識障害については、「昏睡~半昏睡で、刺激による開眼をしない程度の意識障害=JCSが3桁、GCSが8点以下」が6時間以上続いているか、「健忘症~軽症意識障害=JCSが2桁、GCSが13点~14点」が1週間以上続いているかといったような程度の判定があります。

    ※JCSは、覚醒の段階を9段階で表現するもので、数値が大きいほど意識障害が重くなります。
     3桁=刺激しても覚醒しない状態
     2桁=刺激すると覚醒する(刺激をやめると閉眼し、眠る)状態
     1桁=刺激しないでも覚醒している状態
    ※GCSは、意識レベルを3点(深昏睡)から15点(意識清明)で評価するもの。

    急性期における脳内出血の有無

    急性期において、脳内出血が確認される場合には、相当程度の軸索損傷が発生していることと推定されること、くも膜下血腫が認められる場合には、びまん性軸索損傷が推定されることから判定基準となっているものです。

    脳室拡大・萎縮

    外傷後3ヶ月以内に脳室拡大・萎縮が認められる場合も高次脳機能障害が疑われます。この場合には、経時的な画像比較が必要となるので、高次脳機能障害が疑われる場合には、一定期間ごとに画像を撮影しておく必要があります。

    治療の過程でこれらの事情があった場合には、高次脳機能障害を疑い、高次脳機能検査を受けておく必要があります。

    経過の観察

    高次脳機能障害では、急性期の症状は急速に回復し、その後はゆるやかに回復することから、受傷後1年程度経過観察をした上で症状固定をすることが望ましいと言えます。ただし、幼児や児童の場合には、成人に比べて頭部外傷に対する抵抗力が強く、回復力が高いため、学校などで経過観察し、慎重に判断することが要請されます。
    また、高齢者で就労していない場合は、事故の前後の就労能力の判断が困難ですから、日常生活状況の調査が必要となります。
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